月曜日, 1月 30, 2006

トゥルーボイス(1)


 犬とベッドに関する小噺

 記憶にはないのだが、幼児の頃、犬に噛まれたらしく、大人になっても犬とは一線をひく生活を送ってきた。そろばん塾の帰りには追っかけられ、世界記録級に猛ダッシュをし、世をすねて反抗していた頃、友達の家で子犬にアキレス腱をがぶっと齧られ、面目まるつぶれになるし、あの動物なんだろう? 最後まで敵なのか、と考えていた。

 そんな時、すでに19になっていたのだが、家に帰ると、犬がいて今日からうちの家族の一員だよ、として迎えられていた。そういうものって家族会議みたいなことが開かれて決められることなんじゃないの? という疑問を持ちながらも渋々納得。

 でも、そこは飼ってみると可愛いもので、どこの犬好きも自分の家のが一番、みたいな気持ちを抱く。

 家族が出かけて淋しくなってしまった犬が、平日に休みのある僕のベッドによくもぐりこんだ。「犬の夢の中に真実がある」というセリフがウディ・アレンの映画にあるが、本当によく寝て、なにかうなっていた。シーズー犬だがレトリバーになっている夢でも見ていたのだろうか? 

 散歩の途中、小学生の女の子が「この犬可愛い」とか言いながら、撫でたりもした。よっぽど自分の方が愛らしいのにね。

 そして、僕は引越し、何年かして使っていたベッドのマットレスもさすがに傷み、新しいものを購入した。届いて快眠した次の日、朝の7時頃だった、電話がかかってきた。母親からだった。
「(犬の名前)が死んだ」と言った。不幸を告げる電話のタイミングはなぜか、早朝か深夜である。あの前のベッドのマットレスを変えた次の日に起こったことだった。

 それから、その一匹の犬を通して、犬社会と確かな抱擁をしたのである。不和は解消されました。それ以降、道行く犬たちをいじってみたり、触れたりしたくて仕様がない。(自分が犬だったらいい迷惑)実際にたまにそうする。人間だったら大問題だが、犬の場合、向こうも機嫌がよければ交友がもてる。また時折り可愛い犬の誘拐を頭の中で考えてみる。

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