土曜日, 1月 21, 2006

スタンダード曲(17)

The Man I Love

 いつか、理想どおりの人が表れるんじゃないの? その人はこんな感じで。と希望観測の唄。

 対、人ではなくても、ヴィジョンがあると、方向付けしやすくなりますよね。次の給料がはいったら、これしよう、というのもある点で方針かな。学校に通ったり、スポーツ・ジムに行ったりするのも、将来の実現予定みたいなプランを思い浮かべれば、身の入れ方も違ってくる。

 これもガーシュインの曲。毎朝のコーヒーを入れる程度の努力で名曲を作り上げてしまうのか?
 名演はやっぱりマイルス・デイビスのミルト・ジャクソンとの共演の一枚。痛ましいほど切々と歌い上げますが、ミルトのソロはもろスインギーです。そし て、セロニアス・モンクの怪演。ジャズ・ジャイアント勢揃いです。まさに黄金期。でも慰め合うような関係ではなく、丁々発止。西部劇のガンマンのようでも あります。

スタンダード曲(16)

In The Wee Small Hours Of The Morning

 朝のひととき。大人になると、夜中にがばっと起きて、過去の失敗やら、失言に後悔することがある。でも、覆水盆に返らず。どうしようも出来ないですよね。済んだことだし。時は流れているし。

 シアトルの眠れない男。トム・ハンクスとメグ・ライアンの映画でも流れていました。ケーリー・グラントの恋の映画をモチーフにした映画。エンパイア・ステートビルに駆けつける子供。
 それにしてもケーリー・グラントさん、この人のスーツの着方、完璧ですね。ヒッチコック映画でピンチに陥ったときでも、着崩れしません。

 このすがすがしい曲調の愛聴盤はJohnny Lytleがvibesを演奏しているバージョンです。盛り上がりすぎて、もう一度寝付かれなくなりそうですが。そろそろ新聞配達の音が聞こえてくる。小さめにラジオをつけて眼をつぶろう。

スタンダード曲(15)

April In Paris

4月のパリ。オータム・イン・ニューヨークと同じ作者。

 世界的に有名な美術館の、また絵画の集約。一日に一つだけの美術館に行き、名画と共に暮らしたい。オルセー、ルーブル、オランジェリー。そんな贅沢に時間をつかってみたいな。

  そして、文明と河。パリにはセーヌ河。サックスを吹く辻音楽師。ジャズマンもニューヨークを離れ、フランスに移り住んだ人も多い。デクスター・ゴードン が演じた映画もそんな題材だった。ロビン・ウイリアムズの「レナードの朝」にも患者役でちらっと出ていた。みんな、この豪快にならすサックス・プレーヤー のこと知らないのだろうな? と映画館で一人考えた。

 サド・ジョーンズというトランペッターがいる。ブルーノート盤でこの曲を吹いている。バックには堅実なマックス・ローチ。この頃は絶好調。後ろで叩けば、名盤に仕上がっている。ジャケットも傑作。

 このサド・ジョーンズには、ハンクとエルビンという個性的な兄弟もいる。こうした人たちを産んで、育てた母親というのは、もっと感謝されても良いと思うけど。本人以外に表彰される機会ってあまりないしね。でも覚えておこう。

スタンダード曲(14)

Autumn In New York

秋のニューヨーク。ヴァーノン・デューク作。

 現地に足を踏み入れたことはないが、紅葉のセントラル・パークはきれいなんだろうな。

 若い頃に、夏から秋にかけて、日光のホテルで働いたことがある。休日にはバスの無料パスを借りて、中禅寺湖を通り、いろは坂を下り、駅まで行って、隣の 駅で一日を過ごしたりした。その時の鮮やかな秋の色は、今もまぶたの裏に張り付いている。竜頭の滝というところも見物した。湿地帯も同僚の車に同乗し、連 れて行ってもらった。我が青年の日の1ページである。地べたにあった舞茸も料理長が調理してくれ食べた。とてもおいしかったな。

 そして、この曲。
 ケニー・バレルというギタリストが丁寧に弾いている。なぜかアンディー・ウォホールのイラストのジャケット。枯葉のうえを歩いているような感触。そして、我が庭にいるような居心地。長年ゆめみた故郷に戻ってきたよ。

木曜日, 1月 19, 2006

スタンダード曲(13)

Just Friends

  ただの友達と言われたら、もう終わりです。アウトです。これから友達でいましょうね、という題名です。

 個人的に好きなレム・ウインチェスターが「Lem's Beat」というアルバムで演奏したのがダントツです。二位はベニー・グリーンのブルーノート盤「Back On The Scene」でトロンボーンを吹いているのも素敵です。

 うまく、何事もうまく断られたいですよね。でも、この曲を作っちゃった人は実体験なのでしょうか? 着想を得たのは? なんて質問されたら、どう答えるのだろう。恐怖です。

スタンダード曲(12)

Cry Me A River  

 ジュリー・ロンドンの唄でも有名な楽曲。
 泣いたらいい。私が泣いたように、あんたも泣いたらいい! 
 ほとんど恨み節です。

 Lucky Thompsonというテナー・サックスプレーヤーがいます。感情を荒げることなく静かに吹いています。(’65年)またバックにはトミー・フラナガンの ピアノも加わります。これまた、紳士的なくつろがない美学とでも言いましょうか、冷静に弾きます。そう感情を剥き出しにするなよ、若いもん。とたしなめら れているようです。

 こういう行儀の良い演奏もたまには、ありですね。
 PeopleとかAs Time Goes Byとか怪しげな曲も同じアルバムに入っています。ちょっと迎合しすぎじゃないの。


スタンダード曲(11)

But Not For Me

  愛の唄って、歌われてるみたいだけど、僕の為じゃないしね。
 幸運の星って、どこかで瞬いているみたいだけど、当然のごとく、僕のためにではないからね。
 そんな歌詞です。

 チェット・ベイカーのなよっとしたトランペットとヴォーカルで聴くと、たまりません。
 往々にして、人間って、ついそんな感情にとり付かれるような気持ちになる時ありますよ。

  このチェット・ベイカーの映画があります。題名は「Let's Get Lost」だったような気がします。紅顔の美青年というような表現で表すにふさわしいヤング・チェットが、歳月って恐ろしい。スクリーンには年老いてし まったトランペッターが登場します。彼の音楽もヴォーカルも円熟というような音楽ではありません。青年の若いこころの音楽です。そして、若さには疑念がつ きまといます。しかし、残っている音は、いつまでもみずみずしいものです。

スタンダード曲(10)

The Way You Look Tonight

 Jazzメンが好んで取り上げるスタンダード。邦題は「今宵の君」 
 きっと先に、なんやかんやあったとしても、今夜の君の姿を思い出せば、なんとか乗り越えられるだろう。だって、あなたの笑顔は暖かいし、その頬はとても柔らかいし、ね。充分だよ。

 人生讃歌の唄でしょう。過去のあの瞬間にいろいろな、褒め言葉をいうタイミングを逃した人たち。(髪の毛切った? とか男性にはネクタイの趣味など)この曲を聴いてこころを入れ換えましょう。

  演奏家によっても、はっきり変わってしまう曲です。スタン・ゲッツはまろやかにはじめて、あとからジワッと土俵際に詰め寄られます。(STAN GETS PLAYS)ブルーノートのジョニー・グリフィンはぐいぐい、もういいよ! という所まで褒めちぎりです。どのようなタイプがお好みでしょうか? 

寒か~

 一句 ゴミ箱も 倒れる風の 強さかな
     地肌にも 突き刺す木枯らし 明日晴れ

 母親からの電話で、父親の身体の具合がよくないそうだ。ずっと仲良くないけど、それはそれ。なんか落ち込むねぇ。急に電話がかかると、こういうもんだね。便りのないのは、良い便り。って本当ですね。

水曜日, 1月 18, 2006

POPS名曲選(5)


Someday We'll All Be Free

この人は夢想家なのだろうか? 希望にあふれている歌です。あとこの時代(’70年代前半)の特徴のエレキ・ピアノはいつ聴いても心を和ませますね。

 以前の会社では、音楽を自分でするような人が数人いましたが、どの人も例外なくダニー・ハサウェイが好きでした。とくにライブ盤です。他人の唄をうたっても、自分のオリジナルのような吸引力があります。(最近発掘されたCDには、ビートルズのイエスタディまで歌っちゃっています。観客の合いの手が、また見事です)

 しかし、この人も本当に若くして世を去ります。きれいすぎて、こうしたせめぎ合う世の中には居場所がないのでしょうか。老成した時の声も、聴いてみたかったです。

豆腐より固くて白いもの(3)

日陰者ヂュード

 イギリスのトーマス・ハーディという小説家の作品です。
 主人公はただ勉強したくて、頑なまでの向上心があり、でも生き方がぶざまで、失敗を繰り返しという内容です。頑張りたい気にもなりますが、一人の人間の無力さを痛切に感じます。

 映画化もされました。タイタニックの女の人が出ています。素晴らしい出来ですが、この英国人の文章には何倍もの力があります。

 一日の労働を終えた後では疲れがひどくて、徹底的な勉強に必要な批判的注意を持続できないことがよくあった。(大沢 衛訳)

 なんか、ふらふら酒なんか飲んでいないで、頑張りたくなりますね。

POPS名曲選(4)

Try Me

 伝説のジェームス・ブラウンのバラードです。魂こもりすぎです。アップテンポのファンクも良いけど、このスローも泣きです。

 文春文庫から「俺がJBだ!」という自伝が出ています。マーヴィン・ゲイとデュエットしたタミー・テレルという歌手にぞっこんだったという内容があります。この歌手も若くして亡くなります。いまも引きずっていると語っています。感情ゆたかですね。

 存在が大きすぎて、また「ゲッロパ」という言葉が独り歩きして、きちんと音楽が聴かれていないような気がします。参考までにバラード集のCDが出ています。ただ上手いです。

スタンダード曲(9)

Bewitched,Bothered And Bewildered

持っている辞書で調べてみると、魅惑されて、悩まされて、途方にくれて。という意味らしい。一体、なにがあったんだ?

 ロジャース&ハートという名コンビの作。第一にアート・ペッパーの 演奏が楚々として、なおかつ甘美で本質的に芸術家なんでしょうね。以前、もう手元にないが自伝(ストレート・ライフ)を読んだことがあります。麻薬付けの めちゃくちゃの中、ふらっと楽器をくわえれば、名演奏になってしまう、ということを自分で語っていました。でも、マイルスのメンバーと絡んだ時は、かなり びびっていた状況も詳細に語られていました。

 一時、ジャズ界から離れ、戻ってきたときは、違った演奏になってしまい、この人の良さである、若い危うさみたいなものは、一切消えてしまっていました。どっちが好きかは別として。

スタンダード曲(8)

Sunrise,Sunset

 「屋根の上のヴァイオリン弾き」というミュージカルの挿入歌だそうです。ミュージカルって何か受け付けない人っているみたいですよね。アメリカ産の今風オペラなんでしょうかね。旧い時代のF・アステアのダンスなんか、とても素敵です。

 あと、現代でもW・アレンの「世界中でI LOVE YOU」とか、ケネス・ブラナーが出てる「恋の骨折り損」というシェークスピアの原作を脚色した2本の映画はとても面白いです。芸達者のエドワード・ノートンが世界中の・・・方に出ています。

 ソニー・クリスというやけっぱちのアルト吹きがいます。「This Is Criss!」の中でこのワルツ調の曲を演奏しています。これ以降にプレステッジというジャズ・レーベルに残した数枚のアルバムは、期待を裏切りません。

 

火曜日, 1月 17, 2006

東京スケッチ(2)


 骨董屋の店主が茶碗を愛でるように、都市を愛します。

 第2回は「水元公園」葛飾区にあります。少し先は埼玉の三郷です。

地元なので、小学生の釣りにはじまり、大人になってからは、芝生の上で日焼けしたりしていました。

本当に広い敷地なので、公園の隅っこに行けば、プライベート・パークを持つことになります。

 小学生の時に「ええじゃないか」という映画のオープン・セットもありました。あの時一緒に釣りに行った同級生は引っ越したが、今頃なにをしているのだろう? 少年老い易く、学なり難し。

スタンダード曲(7)


These Foolish Things

飛行機に乗ったときのチケットの半券や、吸いかけのタバコなど、そうしたつまんねぇ細々としたものが、あなたを思い出すきっかけになるという唄です。

  記憶っていろいろなものと結びついているものです。シドニー・オリンピックを旅先の沖縄のホテルで見てました。だから、マラソンの高橋さんの金メダル も、西武の松坂さんの不調も、サッカーの中田さんのPKはずしも(これはカー・ラジオ)シドニーではなく、沖縄と関連づけられています。人間って不思議な ものです。

 この曲の名演は(はっきりいって素敵な曲なので、どれも見事)ミルト・ジャクソンのアトランティックのBallads&Bluesに入っています。今の家に引越して片付け最中に聴いたのも、懐かしい思い出です。

 

スタンダード曲(6)

I'm A Fool To Want You

このFoolって夢中とか狂おしいとか、そんな感じなんですかね? 言語ってむずかしいっす。

 ビリー・ホリディの素晴らしい歌が、若い時にCMに使われ、なんとなく覚えました。

 いまのBESTはデューク・ピアソンのテンダー・フィーリンズというアルバムのピアノ・トリオの演奏です。洗練され知的な印象があり、泥臭い感じはありません。そのことがこの曲に合っているのでしょうね。
 このアルバムは名曲揃いです。ジョン・ルイスあり、スタンダードあり、ブルースありで、静かに内省的に聴くのに申し分のない一枚です。

 ソング・ライティングにフランク・シナトラもかんでいるようです。

POPS名曲選(3)

How Can You Mend A Broken Heart

 
アル・グリーンの名曲です。ノッティング・ヒルの恋人に挿入歌として使われていました。
 (エルビス・コステロの曲もGood)
 それにしてもヒュー・グラントってシャツの着こなしが見事ですよね。理想的です。

 海外の小さいお店でシャツを買ったことがあります。試着してみると、シャツの腕があまりにも長くて店員のおじさんに軽く笑われました。夫婦で経営してい るような店なので、夕食のときにでも「今日のあのジャップの、あの腕の長さ見たか?」と被害妄想的な状況を思い浮かべてしまいます。でも、買って帰って着 てますけどね。まったく関係ないけど、女性がYシャツをブラウスと言い間違えるのも、なんか好きですね。

 この曲以外にもたくさんのヒットがあります。お得なコンピなどから好きな曲を探すのも賢いわざでしょう。

 

豆腐より固くて白いもの(2)


 夏目漱石の「こころ」です。夏休み中の本屋さんみたいです。課題図書として読みましょう。

 パンドラの箱という言葉がある。開けてはいけない箱の中を開けると、あらゆる災厄が出てきた。不幸の元凶らしき中身が詰まっていました。それでも、最後に臆病者の希望が残ったという話です。

 この漱石の小説を読んでしまうと、同じように知らなくてもよかったような感情の渦に触れてしまいます。簡単にいうと古い時代ですから、直接的にではないのですが、友人同士が女性を取り合うような内容です。結末はいかに。

  ところで夏目漱石という人が、もしいなかったら、現代の日本語が違ったものとして受け継がれていたのではないかと思う。(もっと不便なものとして)いま 普通にこうして文章を書いたり、メールを送信したり、テレビのテロップを見たりするのも、明治の数人の知識人が改良した日本語の恩恵を蒙っているような気 がします。大げさか。

 あの時代に大学に行って、ロンドンに留学して一流国の仲間入りができたのも日本人の気骨さがあったのでしょう。お札にするぐらいでは、正当な評価といえないのではないか。簡単にいうと尊敬しているんですよ。

月曜日, 1月 16, 2006

スタンダード曲(5)

They Can't Take That Away From Me

私からは奪えない…という題名です。何を? というとたくさんの思い出の場面みたいなものをですね。

 例えば、あなたの帽子の被り方。 へんな歌い方。そうしたものを記憶から奪い去れない、と言っているんですね。納得。
 
  ガーシュインの作曲です。お勧めの一枚。レーベルはRiversideで、James Clay&David" Fathead"Newmanの2人が2本のサックスを吹いています。暢気な演奏です。力まずに聴きたい一枚です。いつも陰ながらのウイントン・ケリーの ピアノは至極かろやかです。

スタンダード曲(4)

All Or Nothing At All

ブルーノートのアルバムで、F・ハバードとT・ブルックスが2管編成で演奏しているのが、今のところベストです。こういう活きのいいスカッと したJAZZって、もう何にもいらないですね。オープン(開け)セサミ(ゴマ)というアルバム名です。横顔の若々しい彼が、トランペッターです。


 若い頃って、この「全てか何もなし」みたいな状態に追い込みますよね。グレーゾーンは許さない! そんないさぎよさが演奏に表れている?

 

POPS名曲選(2)

A Change Is Gonna Come

とてもガッツのある曲。サム・クックの熱唱。

 自己紹介します。川のそばで生まれたんです。ちいさなテントでした。いろいろ苦労もしましたが、もうじき変わる、もうすぐ変わります。長く待ちましたが、変化の兆しを感じています。こんな内容です。

 公民権運動の頃の歌です。キング牧師(I Have A Dream)とマルコムXの時代です。片や平和主義、もう一方は時折り暴力もじさないよ、というスタンス。わたくし相対性理論というのを間違って認識していたことがあります。
 つまり相対的というか、標準軸に対して、暴力もあれば平和的なものがバランスとれるようになっているという誤解。一方にガンジーみたいな超平和的な人を人類は生み出すが、片一方ではヒトラーみたいな者も生み出すという考え。これが相対的と思ってました。アホですね。

 この感動曲をネヴィル・ブラザーズも歌っています。

 サム・クック本人は変化を見ないまま、残念にも銃で撃たれてしまったようです。2度と現れない高価なサファイアみたいな歌手なのにね。

 

日曜日, 1月 15, 2006

POPS名曲選(1)

The Tracks Of My Tears

世界中で一番、好きな曲かもしれない。スモーキー・ロビンソン&ミラクルズのヒット曲。

 駄ジャレばっかり言いまくり、人からは陽気な人間だと思われやすいんだろうなぁ 
 でも、ぼくのスマイルってメイクみたいなもんだから・・・という唄です。

 S・ロビンソンが高い声で切々と歌ってくれます。一聴の価値あり。

 しかし、この中でも使われているが「サブスティチュート」(代わり)という発音って難しいですよね。もちろん英語圏の中では幼稚園児みたいな子も楽勝なんだろうね。

 シリーズ化決定。2回目はサム・クック

豆腐より固くて白いもの(1)

 歪んだ書評です。個人的に本という形体を、無限に愛しています。

 フランツ・カフカの「変身」について触れます。

 いきなり虫になって無視されるようなストーリーです。

 この内容が現在では、ニートや引きこもりの人たちについて書かれているような気がします。家から急に出られなくなり、家族から疎んじられていく過程というふうに読めば、リアルに迫ってきます。だからといって何ひとつ解決されるわけではありませんが。

 カフカという人自体、あまり世間的に成功したわけではありません。会社員としてせっせと働き、余暇として小説を書いたような人とされています。余暇とし ては、あまりにも立派すぎる作品群です。電車の中で華美な女子高生がカバーもせずに読んでいたのを見た時は、まさに驚きました。こう考えると、東洋の片隅 でも読まれれば、成功中の成功と言えるのでしょうね。

 男性更年期という事象もありますし、いくらか身につまされます。