木曜日, 2月 02, 2006

トゥルーボイス(5)

走る男

 中学時代、とにかく陸上競技に明け暮れていた。そこには、ライバルと呼べるのだろうか、一人の友人がいた。いくらか分析してみると、運動能力の方は、彼に軍配があがり、勉強については、ほんのちょっとだけ、ぼくの方が上かな。
 2人で短距離の練習をしていた時、3,4階の窓ガラスに下級生の視線をありありと意識しながら、80メートルぐらいのダッシュを8割方の力で、数回駆け抜けるトレーニングをした。でも、その視線のために、全力を出し切り、本気で走った。どちらからともなく「いまの本気だよね」と笑った。
 
 大人になって、生活力を考えると比較にならないぐらい彼が優勢になる。性格のよい妻を得たのも、真っ先に家を購入したのも彼だった。8割方のダッシュではないね。

 もう一つのエピソード。お気に入りのスパイクを持っていた。陸上用のは、ネジ式にスパイクの針を差し込んだり、取り替えたりすることが出来る。しかし、その箇所が、どうねじっても取れなくなり、買った店に行き、抜いてもらおうとした。自宅と一緒になっているような小さなスポーツショップなので、作業場なのだろうか見えない2階に持っていかれ、あっ気なくきれいに取れたのだが、その2階から階下に向かって靴が投げ落とされた。階段を転がる陸上用の靴を下で見ている店員とぼくの2人。家族喧嘩でもしていたのだろうか? 僕のスパイクが八つ当たりに使われた。とても悲しかった。そんな不当な扱いされてもね。

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